【現行の成年後見制度の限界に立ち向かう】(やなぎ社会福祉士事務所)

【現行の成年後見制度の限界】
認知症800万人時代に対応できるのか
〇認知症と言っても人それぞれである。ボケて判断能力が無くなったら後見人をつけたほうがいい…なんて安易な話ではありません。
〇認知症であっても周りのサポートがあれば十分に自分らしい生活が送れる人もいる。
〇認知症相談を受けてみて「この方には後見人をつけた方が良い」とぴったり型にはまる人の方が珍しい。
〇私は現行の不備だらけの成年後見制度には全く魅力を感じない。
〇制度ありきではなくて本人ありきです。認知症の方を成年後見制度に当てはめようとすることじたいに無理がある。
〇財産管理が必要な人、身上保護が必要な人、生活見守りサポートが必要な人、認知症である無いにかかわらず、後見人をつけるかつけないかはその人それぞれです。
〇後見人でなくても財産管理はできるし、身上保護も生活サポートもできる。法律の範囲内で泳げれば、やりようでどうにでもなる。
〇「この人にはこれしかない」という見識の浅い、視野の狭い対応を私たちは見直さなければならない。
〇成年後見制度はその方の生活を支えるための様々な福祉サービスのうちの単なる部品でしかない。
〇「後見人がついたからもう安心だ」なんてことはあり得ないと認識した方がいい。

「私は後見人である前に、その方の生活を支援して人生に彩りを与えられる、一人の人間として相対したい」

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認知症800万人時代において、成年後見制度の「終身契約」「月額2万〜6万円の報酬負担」「資産凍結に近い硬直運用」といった構造的欠陥が顕在化している。
​親族排除や死後手続きの空白といった実務上のリスクを踏まえ、家族信託や任意後見など代替手段と事前設計の重要性が高まってきている。
​「親の口座が凍結され、介護費用が引き出せない」。そんな声をあちらこちらで頻繁に聞くようになった。この問題はもはや特殊なケースではない。
​内閣府の推計によれば、認知症の高齢者は2025年前後に約700万人、2030年代には800万人規模に達すると見込まれている。

これは65歳以上の約5人に1人に相当する水準だ。こうした状況の中、判断能力が低下した高齢者の財産や権利を守る仕組みとして、国が整備してきたのが「成年後見制度」である。確かに恩恵を受けている方がいるのは確かです。しかし、現場ではこの制度が必ずしも家族の期待通りに機能していない実態が、以前から浮かび上がっている。

「制度は“財産保全”を最優先に設計されているため、本人や家族の生活の質をどう高めるかという、福祉の本来の視点がおろそかになりがちだ。結果として、“安全で硬直的”な運用になりやすい」

⚫現場で見過ごせない問題点
1.事実上の終身契約という拘束性
成年後見制度の最大の特徴は、一度開始すると原則として本人が亡くなるまで継続する点にある。途中での解任は、不正や著しい不適格性がない限り極めて限定的である。​後見人を止めたいとか変えて欲しいと言う声をよく聞くが現行制度では難しい。つまり、後見人との相性が悪くても、土地売買や相続財産分割協議など、後見が必要な事案が終了しても、利用者側から柔軟に変更することは難しい。ビジネスに例えれば、「契約解除がほぼ不可能な外部委託契約」に近い不可解な構造といえる。

2.報酬体系の不透明性と継続コスト
後見人への報酬は家庭裁判所が決定し、一般的には月額2万〜6万円程度が目安とされる。資産額や業務量に応じて加算される場合もある。この費用は本人の財産から支払われるため、長期化すれば数百万円単位の支出となる可能性もある。本来は資産を守るための制度が、結果として“固定費として資産を削り続ける構造”を持っている。人にもよるが一生涯では無視できないほどの負担になる。

3.「資産維持」を優先する硬直的運用
後見人の基本義務は「本人の財産を減らさないこと」にある。このため、資産を取り崩す行為には慎重な判断が求められる。しかしその結果、「自宅のリフォーム、家族との旅行、孫への贈与など」いずれも生活の質を高める支出だが、「資産減少リスク」として制約される可能性がある。ここに家族との認識ギャップが生まれる。後見人をつけたら生活が、がんじがらめで不便になった。人によっては権利を侵害されているケースも存在する。

4.死後手続きにおける制度の空白
重要なのは、後見制度の「終了タイミング」である。後見人の権限は、本人の死亡と同時に消滅する。よって死後の実務上の対応はすべて家族に委ねられる。葬儀手配、医療費・施設費の精算、お墓、遺品整理、相続手続きなどである。しかし、家族等の身寄りがいない場合は仕方なく後見人が面倒をみるという心情的な面での対応を求められている。利用者側の期待として“最後まで面倒を見てくれる”というイメージがあるが、制度上は原則そこまでカバーしていない。

こうしたリスクを踏まえると、成年後見制度は何事も万全な「唯一の解決策」ではない。むしろ複数の手段を組み合わせる視点が重要となる。

制度は「使うもの」であって「任せるもの」ではない。

成年後見制度は、本来必要不可欠な社会インフラである。しかし、その設計思想は「不正防止」と「財産保全」に大きく傾いており、現代の多様な家族ニーズに完全には適合していない。

現在、政府内でも制度見直しの議論が進んでいるが、抜本的な改善には時間を要する可能性が高い。

認知症は予測できない形で訪れる。だからこそ、「その時に備える事前の設計力」こそが、これからの家族に求められる最も重要な課題である。

制度改正を待っている暇はない。お客様が求めるサービスを今できる方法で提供しなければならない。

私の持論だが成年後見制度は生活支援サービスの設計を行っていく上で、最後に出てくる単品サービスの一つに過ぎない。

現行の成年後見制度が便利に使えるのならば能動的に使いものだが推奨できるものとは言えない。相談の際はお客様に現行の成年後見制度のメリットとデメリットを説明して、十分理解した上で申し立てを行うように話すようにしている。

やなぎ社会福祉士事務所 代表 柳辰夫

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