地域における独立型社会福祉士事務所の存在意義(埼玉県小川町:やなぎ社会福祉士事務所)
全国的にもいわゆる「独立型社会福祉士事務所」はまだまだそれほど多くはないが、独立型社会福祉士が地域福祉の担い手として、従来の枠にとらわれない形での活躍を期待されていることは事実である。
独立型社福祉士が地域に事務所を構えることでソーシャルワーク活動拠点としての機能を担っていくことも期待されている。つまり独立型社会福祉士事務所の機能と役割が、今後ますます拡大していき地域福祉を考えていく上で欠かせない存在となることは間違いない。
しかしながらフリーランスの社会福祉士(独立型社会福祉士)が、採算面で十分な収入を得ることは非常に難しい現実がある。生活を維持するだけの収入が得られないのである。現時点では独立型社会福祉士事務所には、他の士業のような明確なビジネスモデルがないからです。
私はそんな中でも地域課題を解決するために身を削りながら地域コミュニティビジネスの創設を模索している。それがいずれ独立型社会福祉士事務所のビジネスモデルとなり、採算面でも自主経営できるだけのノウハウが蓄積できると信じている。
国家資格でありながら認知度はいまだに低く、独立型社会福祉士のみならず全体的に専門職としてふさわしいとはいいがたい対応を受けることもある。独立型社会福祉士事務所の設立・運営は、ある意味で社会的認識への挑戦でもある。社会的認識に変革を起こす着実な歩みのためには、地域において地道にコツコツと一つ一つの実践を大切にする姿勢を持ちながら地域密着活動を続けていかなければならない。
独立型社会福祉士事務所には、それがなぜ「独立」である必要があるのかというところが大きな意味を持っている。それは「施設や組織から独立し自らの判断においてソーシャルワーク活動が展開できる」ということであり、「しがらみによる組織の論理、法や制度にとらわれる業務」によって実現し得なかった活動を可能にするという意味で非常に魅力的なものだからである。
一方で冒頭延べたように独立型社会福祉士事務所の設立はまだまだ少ないといえる。これはやはり採算面での課題、社会的な信用や認知が得られにくいのが大きな要因であろう。
現在の独立型社会福祉士事務所の運営は家庭裁判所等から成年後見人を受託し、それが事業の柱となっている場合も少なくないが、採算面はもちろん社会福祉士が現代社会から求められている本来の役割からみても不十分である。社会福祉士として独立して地域福祉事業を行い、それ自体で採算を得ながら、地域貢献のソーシャルワーク実践を行っていくという状況には程遠い現実がある。
以上のことから僭越ながら私のような一部の志の強い者が、細々と地域におけるソーシャルワーク活動を展開しているのが実態であるといわざるを得ない。
また社会福祉士が最も得意とする分野である「生活相談」を事業化するためには、相談料をどのくらいに設定するのかといった課題もある。「参考報酬」のようなものでもあればそれなりのモデルを示すこともできるが、料金設定は社会福祉士個人の「裁量」に任されている。現実はとても「独立」が想定された環境であるとはいえない。しかし逆に考えれば、自分の理念を追求し何でも自由にできるというメリットにもなり得る。
さらに独立型社会福祉士事務所は「社会福祉事業」であるのかという課題も残っている。独立型社会福祉士事務所は、一般的には個人事業主という事業形態をとるが、社会福祉事業として事業の開始を届け出る義務もない。その結果従来のようにいわゆる社会福祉事業を展開している社会福祉施設と比較した場合、相対的には社会的信頼が低くなることや制度的な裏付けがないということで採算面への影響を避けられない。
独立型社会福祉士事務所については、まだまだ実践の蓄積が少ないのと同時にその数も少なく、運営面における事業モデルも示されていない。現在「社会福祉士」として組織に属して勤務している者がリスクを冒してまで独立開業することには躊躇せざるを得ないだろう。
私は2021年4月に3ヶ月の準備期間を経て、やなぎ社会福祉士事務所を開業した。ある意味恐い物知らずでの開業ではあったが、その道は波瀾万丈でこれほどエキサイティングで毎日が楽しくてしかたない仕事はないと思っている。人にお勧めはしないが共にこの道を先駆的に歩む果敢な社会福祉士が現れることを期待している。
最後に、高尚な倫理綱領に押しつぶされ、地域密着のソーシャルワークに限界を感じ、現実を目の当たりにした時に、自分の理想の地域福祉活動に疑問を感じて挫けてしまうことなど数限りなくありました。
でも福祉関連専門職の中で、一人くらい理想を語る社会福祉士がいてもいいのでないか。福祉の総合職ともいえるジェネラリスト的な役割を担う社会福祉士であるがゆえに理想を言える立場なのではないだろうか。
夢をイメージすることなくして理想の現実が訪れるわけがない。私の起業当初の理念「笑顔あふれる地域社会にしたい」は、絶対にブレることなく今後も地域福祉活動を続けていくつもりです。
みなさまのご意見など頂けたら幸いです。
やなぎ社会福祉士事務所 代表 柳辰夫
行政書士として、福祉関係の業務は有るでしょうか。
もちろんです。お手伝いいただけますか?