コラム『任意後見契約の締結について』。

任意後見制度を利用するには、最初に自分が契約を結べるだけの事象認知能力があるか対外的に証明しなければならない。まず最初に本人が物忘れ外来などがある病院を受診して検査を受けて認知症の診断書を書いてもらわなければならない。その後に公証役場に行って公証人の面談を受けて、大丈夫ですと認められて初めて契約の手続きに入れることができる。
契約事務手続きは難しくて面倒で、認知症でなくてもたとえ若い人でも敬遠するくらい複雑だ。また後見人がつけけられればすべてよいわけではなくて、後見人にはできないことを補完する事務委任契約などを別に結ばなければならない場合もある。

成年後見制度の利用が進まないのは、とにかく難しくて面倒だからだ。「後見人ってわからない、何のためのものか…わからないことばかり…暗くて悪いイメージさえも」、多くの人はこんな感想を持っているらしい。もう少しわかりやすく簡単に明るいイメージにならないものか…それにとにかくお金と時間がかかる。

公証役場は病院で少しでも認知症の診断がでると一切その後は受け付けてくれない、裁判所に行って相談してくださいと言われる…、裁判所に申し立て?…こんなこと本人はおろか家族だってそう簡単にはできません。子供が親の後見人になったとしても、裁判所に提出する膨大な書類の作成事務に日常的に追われることになる。しかもそれは本人が亡くなるまで一生続く。

任意後見契約の締結は別にしても、今のうちに親の将来の希望「ボケてもやってもらいたいこと」を聞き取って「任意後見人への指図書」なるものを作成しておくことが必要である。そうしておけば、親の認知症が進行して意志能力・判断能力がなくなっても、本人の意思尊重義務・身上配慮義務、最善の利益を配慮した代理行為が行えるはずである。

原点に立ち返るが、認知症になった後見人をつける必要がある…本当にそうだろうか?確かに必要にかられて、本人のために後見人をつなければならない場合もある(財産を処分する、親族間で親の財産管理にトラブルがある、入院入所で身元保証人が必要だ、相続人になったが遺産分割協議に参加できない…など)しかし、同居の家族で介護や身の回りの世話や事務、通帳などの財産管理が日常的にできているならば、あえて早々に後見人をつける必要はないと思う(法律的にはグレーゾーンではっきり主張できない)

以上のように、法定後見制度を利用するかどうかは慎重に検討した方が良いと思うが、任意後見制度は本当に本人のためになる後見であると思う。私は任意後見契約とそれに付随する事務委任契約を含めた支援を進めていきたい。